ライター山﨑 恵のブログ

音楽、日本美術、甘いものなど。好きなもののことを自由に書いていきます。

『若冲展』

お久しぶりです。

 
どうしよう。前回から4カ月も放置してしまった。。。。。
1月の奈良旅行についても2回アップしただけで途中で終わっちゃってるのに、よくまあしれっと再開できるね?とお思いのことでしょう。はい、おのれのツラの皮の厚さに自分でも驚いています。
 
イヤ、私だってうわこれ気まずいわーって思いましたよ。それでもなんで再開したかといえば、『若冲展』、行ってきたんです。

f:id:megumiy:20160524024439j:plain

 
もちろん並びましたよ平日の昼間に3時間半!

f:id:megumiy:20160524024137j:plain

 
ていうか待ち時間が鑑賞時間の倍以上ってマジなんなん。これを書かずにおられようか! それこそブログのネタにでもしなきゃ元が取れないでしょう?!
……てのはまあ冗談ですが。ともかくも、内容よりも異常な混雑と待ち時間、それを最後まで緩和できなかった運営側への指摘のほうが話題になってしまったのはなんとも悲しい限りです。
(……というか個人的には来場者のマナーの悪さの方がよっぽど気になった。人の多さでガヤガヤしてるからつい気が緩んじゃうのでしょう、友人同士やご夫婦の話し声の大きいこと。まあ3時間待ってやっと観られたんだからテンションあがっちゃうのも分からないではないけれど。さらには美術館てことも忘れちゃったのか、普通に携帯で話してる人も。これにはさすがにげんなり。。。)
正直私だって、見終わって会場から出た直後の感想は「展覧会でこんなに疲れたの初めて……」しかなかったけども。それでも並んだ甲斐があった、本当に来てよかったと思える素晴らしい内容でした。
 
 
作品数は会期中に展示替えされたものも合わせて約80点。これはメインの「釈迦三尊像」+「動植綵絵」全33幅をバラでカウントした数で、東京都美術館もそんなに広くないし、いわゆる大規模展って感じではなかったです。
が、作品のセレクトが想像以上に凄かった。それだけでメインになりそうな人気・評価ともに高い若冲の代表作ばかりを選りすぐり。ただでさえ濃密で飲み込まれそうな作風なのに、その最高峰がこれだけの数並ぶのだからそれはもうとんでもない迫力でした。
 
全部に感想言いたいとこだけど、きっとまた書き終わんなくてアップできなくなっちゃうので主役の動植綵絵についてだけ。写真は、出来が素晴らしかったので図録のものを載せたいと思います(ちなみに図録は会期終了後も買えるみたい!)。
 
まず心を奪われたのは、入り口から一番近い場所に展示されていた「紅葉小禽図」。

f:id:megumiy:20160524025638j:plain

 
この、降り注ぐようにして一面を覆う紅葉の朱を目にした瞬間に、全身になんともいえない寒気が走った。それはもちろん“赤い色が血を連想させるから”とかではなく、美しいものに対する畏怖の念、っていうのともまた異質。
 

f:id:megumiy:20160524030916j:plain

 

f:id:megumiy:20160524031127j:plain

 
この感覚は何なのだろうと、観ながらずっと考えていました。それに気づいたのがラスト、最初の「紅葉〜」と対をなす「桃花小禽図」。

f:id:megumiy:20160524031257j:plain

 
花とともに画面を埋め尽くし、上へ上へと背を伸ばす無数の若葉。もしこれが本物の木ならば、命の輝きと春の息吹に誰もが頬を緩ませているはず。でも、今ここにあるのはたった一枚の絵。
f:id:megumiy:20160524030522j:plain
 
若冲の絵に宿る、観る人の心をかき乱すものの正体は、生きるものだけが持つ溢れるような生命力をなぜか絵から感じ取ってしまった“観る側にとっての違和感”そのものなんじゃないか、という気がするのです。そしてそんな力を持った作品は、江戸後期に生まれた数々の名品の中でも若冲の絵だけだと思う。まさに傑作。
 
楕円を描く巨大なパーテーションを使った、かつての相国寺方丈を想起させる展示方法がとても良かった。あと3フロアのうちまるまる1つを釈迦三尊像&動植綵絵に充てた潔さも正解。たとえ同じ作家といえど、これと同じ空間に並んで見劣りしない作品はそうないと思うから。
 
ていうか私今回初めて知って本当にびっくりしたんですけど、こんな凄まじい作品が、国宝はおろか重文にもなっていないなんて信じられます???
それはこの作品がこの作品が天皇に献上された品「御物(ぎょぶつ)」だったため。最初の持ち主だった相国寺は、明治時代に釈迦三尊像のみ手元に残し、あとの動植綵絵30幅を天皇家に献上します。……といえば聞こえは良いんですが、当時は廃仏毀釈の波によってお寺さんはどこも大変、実際は国に買い取ってもらったんですね。で、その時に支払われた一万円によって、相国寺は窮状を脱することが出来たんだとか。まさに寺の救世主となったのねー。
その後天皇から下賜されて宮内庁の管理下(=体裁上は国民の所有)となりますが、こういった美術品は慣習的に文化財保護法の対象から外されるんだそうです。
現在、動植綵絵を所蔵しているのは皇居内の三の丸尚蔵館。で、今ここ改装&新館建設が進行中。これが完成すれば、動植綵絵を観られる機会は今よりはだいぶ増えそうですね。狩野派の作品とかも相当所蔵してるみたいだし、楽しみだなー。
 
 
ブログ、これを機にもーちょっとマジメに更新しようと思います、、、今後も何卒お付き合いいただければ!!
 
それでは、また。